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本会の考え方
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2011年12月
医療安全を推進しよう─失敗から学ぶ─

社団法人日本放射線技師会
会 長 中澤 靖夫

  

 1999年1月11日,某大学病院で心臓の手術をする患者と肺の手術をする患者を間違えて手術をするという,あってはならない医療事故が発生し大きな社会問題になった.あれから12年がたった今,私たち医療人はこの問題の本質を風化させてはならない.この医療事故から多くのことを学び,失敗の原因を語り合い,職場の意識改善に活用し,次の世代に語り継ぐべきである.良い悪いではなく,人間の命を預かる医療の中で起きた事故である.事故の原因を徹底的に解明し,二度と事故が起きないシステムづくりを行うことが,今後の医療を発展させる命題である.
 ところが,その後も手術,投薬,放射性医薬品,診断,治療,検査における医療事故がマスコミで取り上げられ,日本の医療界全体が国民から不安と不信の目で見られているのが現状である.このような現状を一日も早く打開するためには,病院・診療所の安全管理体制をより質の高いレベルで運用する必要がある.特に,医療事故が発生した場合の取り組みは大変重要である.医療安全室に第一報が入ったら,報告書が来てから取り組むのではなく,すぐ現場に急行し,患者に迷惑にならない状況下で事故事例を再現し,なぜそのような事が起きてしまったかの原因を徹底的に分析する必要がある.事故事例の内容により,病院以外の第三者の方(弁護士)にも加わっていただき,24時間以内にその概要を把握する必要がある.事故事例の内容により,マスコミなどに発表する必要のある事例は早急に記者会見する必要がある.なぜなら,事実関係が明確でない中マスコミにスクープされると,医療事故だけが大きく報道され,国民の医療に対する不信がさらに拡大するからである.
 厚生労働省は2004年10月から,医療安全の確保,安心で安全な医療を提供するため,国立病院,大学病院などの特定機能病院に対する強制的な医療事故報告制度を開始した.報告先は財団法人日本医療機能評価機構・医療事故防止センターであり,現在では1,258医療機関が参加している.医療事故防止センターは中立的第三者機関として,収集した医療事故などの情報やその集計・分析の結果を報告書として取りまとめ,医療機関,国民,行政機関など,広く社会に対して定期的な報告書を公表し,情報の共有化を進めている.また厚生労働省は2007年4月から改正医療法を施行し,医療安全管理体制,医薬品安全管理体制,感染防止管理体制,医療機器安全管理体制を義務化している.
 しかしながら,現状も医療事故が発生しているのが実情である.医療者は人間である.日常生活での勘違い,物忘れ,計算ミスなど,人間は誰でもが過ちを犯すことがある.これらのヒューマンエラーを予防する組織としては,医療安全管理室が重要な役割を担っている.組織の血液型としての報告の文化,正義の文化,柔軟な文化,学習する文化を醸成するとともに,教育機関と連携しながら手術,検査,治療などのシミュレーション教育の充実を図るべきである.座学におけるテクニカルスキルの学習も大切であるが,医療事故を防止していくためには熟練した医療者が覚えている暗黙知,すなわちノンテクニカルスキルの学習も重要である.ノンテクニカルスキルの教育には,シミュレーション教育が大きな役割を担っている.シミュレーション開始前に,参加するスタッフに対する説明を十分行い(briefing),シミュレーション終了後,疑似体験した内容についてスタッフ一同が,良かった点うまくいかなかった点などの振り返り(debriefing)を十分する中で,ノンテクニカルスキルの教育が実施できるのである.医療事故を防止していくには何重もの防護壁を設けるシステムづくりと,医療事故に対する正しい認識と失敗から学ぶという真摯(しんし)な態度の医療者を育成していく文化が最も重要である.

 
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